記事更新日:2020年08月04日 | 初回公開日:2020年07月30日
人事・労務お役立ち情報 採用・求人のトレンド終身雇用とは、企業が倒産しない限り定年まで雇用される制度のことを言います。日本特有の制度であり、日本型雇用システムの1つとされています。これは規則や法律で定められたものではなく、あくまで雇用慣行であることを理解しておきましょう。また、日本型雇用システムでは、主に新卒の学生を一括採用します。入社後に研修などを実施し、ビジネスマナーや専門知識など、長期的に必要となるスキルを身につけさせます。終身雇用制度での採用は、社員を定着させることが出来る点が魅力と言えるでしょう。
以前は労働者を長期的に雇用する方針が一般的でした。終身雇用制度始まりのきっかけは、パナソニックを築き上げた松下幸之助です。1929年の世界代大恐慌の時代、松下幸之助が創業した松下電機の工場では、稼働率が低下し社員が解雇のリスクを恐れていました。そんな中、松下幸之助は従業員を1人も減らさないとし、経営状況が悪化しても雇用を維持し続けました。社員と世間から信頼を得た松下電器は急激な成長を実現したのです。これが、従業員を長期的に雇用する終身雇用制度の始まりだと言われています。
終身雇用の目的の1つとして、長期的な人材育成が挙げられます。入社から定年まで雇用し、長期的な目線から育成をすることで、将来的に企業で活躍する人材に成長します。そのため、新たな人材を雇用するためのコストを押さえられる点が魅力と言えるでしょう。また、長期的に雇用することで企業の方針や文化を浸透させることが可能です。企業の方針を浸透させておくことで、社員全員が同じ目標に向かって仕事をすることが出来るようになります。企業の組織力を高めることが出来る点も、終身雇用の特徴と言えるでしょう。
また、安定した収入も終身雇用を導入する目的の1つと言えるでしょう。終身雇用制度では、入社してから定年までの雇用が保証されています。つまり、定年までは安定した収入を得ることが出来るのです。終身雇用制度を導入すると、社員の安心感につながり離職率を押さえることが出来ます。そのため、終身雇用制度は優秀な社員を長期的に雇用できる制度と言えるでしょう。優秀な人材の確保は、労働生産性の向上につながりメリットが大きいです。このような理由から、終身雇用制度の導入が進みました。
終身雇用の現状として、経済状況の悪化で終身雇用が維持できないことが挙げられます。バブルが崩壊し、グローバル化が進む中で経営が苦しくなった企業は、多くの正社員をリストラし、派遣社員の雇用を増やすようになりました。その影響もあり、終身雇用制度を維持し続ける企業は年々減ってきています。厚生労働省が発表したデータによると、2016年時点で入社した企業に長期的に勤める社員は、大卒で約50%。高卒では約30%でした。この結果からも、終身雇用制度は減少していると言えるでしょう。
現在、日本人労働者の減少により終身雇用を維持できない状態になりつつあります。労働人口の減少に伴い、企業の生産性も低下しました。2017年時点の日本の1時間当たりの労働生産性は、47ドル。ドイツの69ドルや、アメリカの72ドルに比べてとても低いと言えるでしょう。また、人口が減少すると経済が縮小するため、ものが売れない状態になります。経済が縮小すると、企業にとって労働者を養うことが負担になってしまいます。日本人労働者の減少は、終身雇用の崩壊に大きな影響を与えていると言えるでしょう。
終身雇用のメリットの1つとして、社員の生活が安定する点が挙げられるでしょう。新卒社員を定年まで雇用する終身雇用制度を導入することで、社員は時間をかけてスキルを身につけ、仕事の成果を挙げることできます。生活だけでなく、精神的な安定も確保することが出来ると言えるでしょう。また、企業としても長期的な視点で人材育成への投資が行いやすいです。早期離職を減らし、採用費用や教育費用などのコストを抑えることが出来る点も魅力です。長期的な雇用で早期離職率を減らしたい方に向いている雇用制度と言えるでしょう。
また、会社と社員の信頼関係が強くなる点も、終身雇用制度を導入するメリットの1つと言えるでしょう。終身雇用制度の導入により、社員の収入も安定し、安心して働くことが出来ます。企業側が、定年を迎えるまで安定的に仕事を与えることを保証することで、企業に対する忠誠心や帰属意識が生まれます。そのため、経験豊富で優秀な人材を確保することが出来るでしょう。終身雇用制度の導入は、企業と社員との信頼関係を強化することが出来るのです。年々減少している終身雇用制度ですが、このようにメリットも沢山あるのです。
一方、終身雇用のデメリットとして、社員のモチベーションが上がらない点が挙げられます。終身雇用制度とは、ある意味たとえ真面目に働かなくてもクビにならないという事を示しています。そのためモチベーションが低く、やる気のない社員も少なくありません。リストラのリスクが少ないという安心感から、向上心や成長のための努力を怠ってしまうのでしょう。早期離職のリスクが減るとしても、企業の生産性が下がってしまっては元も子もありません。終身雇用制度導入の際は、このようなリスクも考慮しておく必要があるでしょう。
長時間労働になりやすい点も、終身雇用制度を導入するデメリットの1つと言えるでしょう。先ほども述べたように、終身雇用制度の導入は、社員のモチベーションが低下するリスクがあります。生産性が下がると、求められる成果を出すのに時間が掛かり、必然的に長時間労働になってしまうでしょう。長時間労働になると、無駄な残業代が掛かかりかねません。終身雇用制度を導入する際は、社員のモチベーション向上と仕事の効率化を進めるための工夫が必要でしょう。評価制度の見直しは、長時間労働の改善に効果的ですよ。
続いて、終身雇用と年功序列制度についてご紹介します。年功序列制度とは企業に勤める年数や年齢に応じて、賃金や役職が決まる制度のことを言います。そもそも、終身雇用の導入とともに年功序列制度が定着しました。終身雇用は、1度入社すれば定年退社するまで企業が面倒を見なければいけません。年齢が高くなるにつれ、子育てや教育費など出費はどんどん増えていくでしょう。これに対応し、給料を増やしていくことで社員は安定した生活を送ることが出来たのです。このように、終身雇用と年功序列制度は密に関係しています。
年功序列制度は終身雇用の見直しによる影響を受けました。経済団体連合では、終身雇用制度や年功序列制度、また新卒一括採用がセットになった日本の雇用制度を見直すべきとしています。現在、勤続年数が上がるとともに能力も上がるという考えに、多くの企業が疑問を感じています。そのため、終身雇用制度の見直しとともに、年功序列制度の見直しを図る企業も増えてきました。富士通株式会社では、早期退職希望者を募集したところ2850人の応募がありました。勤続年数の高い社員に対し、早期退職を進める企業も増えてきています。
終身雇用制度の崩壊に伴い、成果を評価する成果主義が注目されるようになりました。成果主義とは、社員が達成した成果に基づいて、待遇や賃金が上がる制度のことを言います。成果主義は終身雇用と真逆の制度であると言えるでしょう。終身雇用は右肩上がりの経済状況を前提とした制度であるため、労働人口が減少している現代で続けていくことは難しいです。一方、成果主義では年齢に関係なく能力がある人が評価されるため、若者のモチベーション向上に繋がるでしょう。1人当たりの労働生産性向上に有効的な制度と言えるでしょう。
終身雇用が衰退する中で、企業としてどのような対策が取れるのでしょうか。対策の1つに、業務をマニュアル化し誰でも同じ成果を出せるようにすることが挙げられます。これは、労働人口減少に伴い、企業の生産性が下がってしまうことを防ぐことが出来るでしょう。新人教育のレクチャー内容もマニュアル化しておくことで、担当者によって内容や質が異なることも防げます。そのため、企業が求めるレベルを満たした人材を育成することが出来るでしょう。労働生産性の低下を防ぐためにとても効果的な方法と言えるでしょう。
成果主義を取り入れることも、終身雇用が衰退する中で企業が取れる対策の1つと言えるでしょう。報酬や役職を決定するのに成果主義を取り入れることで、社員1人1人のモチベーションを高めることが出来ますよ。社員のモチベーションが上がらないという、終身雇用制度のデメリットを解消することができるでしょう。また成果主義を取り入れることで、社員の生産性も向上します。だらだらと長時間仕事をしてしまうという事も防げるでしょう。成果主義の要素を取り入れることも、企業の生産性向上のためにとても大切です。
今回は、近年注目を集めている終身雇用についてご紹介しました。終身雇用制度の導入は、社員の生活が安定するというメリットがある一方で、社員のモチベーションが上がらないというデメリットもあります。また、近年は日本の労働人口減少に伴い、終身雇用は崩壊の方向へ進んでいます。その影響もあり、年功序列制度の見直しをする企業も出てきました。業務のマニュアル化や成果主義を導入することで、終身雇用衰退の対策をとりましょう。現代社会に合った働き方を会社に取り入れ、労働生産性の向上を目指しましょう。
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